長岡の森WG
ボランティアメンバー募集中。体験参加OK。アメリカザリガニ駆除活動
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長岡樹林地の中央部に通称「山桜のため池」元の名を「松山溜」というかなり昔に作られたため池があります。水が抜けて荒れ果てた窪地になっていましたが、長岡の森WGが発足した1995年から、大変な労力を投入して改修工事を行い、ため池として復活しました。
樹林地一帯の生物多様性を維持する上で大きな機能を果たしているため池ですが、アメリカザリガニの大量発生が頭痛のタネです。池の動植物のみならず、池下流の湿地に生息するトウキョウサンショウウオなどへの悪影響を軽減するため、毎年駆除作業を続けています。最近の駆除作業の状況についてお知らせします。
〈2023年〉
仕掛けを大幅に増やす
・昨年は、溜池にアナゴ籠6個を設置し、年末近くなってから塩ビ製の人工巣穴を追加したが、今年は、古いものを修理したり、小型籠を買い足したりして、アナゴ籠を10個、塩ビ管製人工巣穴を6組用意した。人口巣穴は、卵や羽化直後の稚ザリを腹に抱えたメスを捕るためのもの。
アナゴ籠に入れるエサは、昨年同様、徳用煮干し。赤黒い成体を「大」、茶褐色の幼体を「小」としてカウントすること、捕獲したザリガニは山中に穴を掘って埋め、踏みつぶすことも昨年同様とする。
仕掛け投入
・3月2日~昨年より1か月早く仕掛けを入れた。
溜池にはアナゴ籠7個・人工巣穴5組
溜池直下の小川にアナゴ籠1個・人工巣穴1組
みんなの広場前の小川に小型アナゴ籠1個
カキツバタの湿地脇の小川に小型アナゴ籠1個 を設置した。
写真は、人工巣穴製作者のSさん。
早春でも大量捕獲
・3月9日~溜池で大36匹、小8匹を捕獲。ただし、全部アナゴ籠のもので、人口巣穴の収穫はゼロ。
小川の仕掛けからは大小各1匹のみ。ドジョウとアブラハヤを混獲。
・3月12日~溜池から大41匹、小17匹を捕獲。うち人口巣穴は、小3匹のみ。
小川からは、大1匹、小3匹。
カエルさん、ごめんなさい
・3月23日~溜池西部に仕掛けたアナゴ籠がずっしりと重い。悪い予感がする。籠を引き上げると、中でヒキガエル10匹近くとアカガエル数匹が死んでいた。産卵期のカエル合戦で、1匹が籠に入ると、それを追って次々と籠に入り込み、溺死したようだ。
引き上げて土に埋めようと考えているところに、保育園の子どもたちが大勢やってきた。子どもに見せるわけにはいかないので、そっと池の底に沈めた。
アナゴ籠は、カエルの産卵が終わるまで撤去する。
カエル産卵終了
・4月上旬~今年はヒキガエルの卵が無くなってしまうかと心配したが、そんなことはなく、あのニョロニョロした卵嚢が結構見られた。
・4月13日~カエルの卵はほとんど孵化しオタマジャクシになったため、カエル混獲のおそれはないと判断しアナゴ籠を投入。
その後、オタマジャクシの混獲が続いたが、すべて生きており池に返す。当然のことだが、カエルは溺れるが、オタマジャクシは溺れない。
抱卵メスが捕れない
・4月中旬~5月下旬 新兵器の塩ビ製人工巣穴の8割方にザリガニが入るようになったが、小型の成体オスが多く、目的の抱卵メスはゼロ。
ドジョウ、メダカ、オタマジャクシ、アブラハヤの混獲が多く、それらを生きたまま水に返す手間が大変になってきた。昨年に比べ、メダカが増えたように思う。卵をもっているらしい個体が多い。
条件付特定外来生物
・6月3日~毎年恒例の桜小学校放課後教室のザリガニ釣り。子ども9人、保護者7人が参加。ほとんどの子どもが釣れた。
6月1日からアメリカザリガニが「条件付特定外来生物」に指定され、「持ち帰ってもよいが、飼うなら終生付き合うこと」などを説明した。
持ち帰った子は数名。
捕獲方法一部変更
・6月15日~大雨のため、カキツバタの湿地脇に仕掛けておいたアナゴ籠が流失し、行先不明になった。
湿地脇とみんなの広場脇の籠に入るザリガニがわずかであること、通常の作業の後に湿地まで行ってザリガニを処理をすることが大変なことから、小川の仕掛けは溜池直下だけにした。
また、一匹一匹数を数えることをやめ、目分量で10匹単位のおよその捕獲数を記録することにした。
写真は、処理した後で掘り返され、食い散らかされた現場。多分タヌキの仕業。
魚の混獲が無くなった
・7月半ばから8月末まで連日の猛暑が続き、溜池の水が濁って少し臭い。溜池下の小川は、腐敗臭がして泡が立っている。
毎週、ザリガニは大50匹程度、小20匹程度がコンスタントに捕れるが、ドジョウ、メダカ、アブラハヤの混獲が全く無くなった。溜池は酸欠状態のようだ。
また、埋めたザリガニが掘り返されることも無くなった。タヌキに何かあったのか?
抱卵メスが捕れた
・9月21日~溜池に仕掛けた人口巣穴で抱卵メス2匹捕獲。秋口の繁殖期に入ったらしい。
ドジョウ、メダカ、アブラハヤの混獲も復活した。9月上旬に大雨が降り、溜池の水が一新されたためか。
ミズカマキリが捕れた
・10月5日~大小ともに80匹以上を捕獲、今期最大。
抱卵メスを2匹捕獲。小は、親から離れて間もない稚ザリが多い。
メダカ、ドジョウに加えてミズカマキリを混獲。
最近、カワセミを頻繁に見かける。
ようやく気候が和らぎ、生き物の動きが活発になってきた。
相変わらず繁殖力旺盛だが
・10月5日を最後に抱卵メスは捕れないが、幼体が多い。それだけ繁殖しているということだが、魚類の混獲も多いことを考えると、溜池がザリガニだけの天下になっているわけではなさそうである。
・11月26日~大約40匹、小約30匹を捕獲。メダカが佃煮にできるくらい大量に捕れた。(全部池に返した。)
これからは雨が少なく、溜池が干上がることもありそうなので、アナゴ籠を撤収した。人口巣穴は、年中設置しておく。
2023年捕獲数累計
大・約1840匹、小・約950匹、合計約2790匹
2023年月別捕獲数
駆除活動を振り返って
捕獲数は、昨年より約500匹(23%)増えたが、仕掛けの数を増やしたので、当然のことだろう。
昨年は、7月に溜池が干上がったため、その時に大量に捕獲し、その後は捕獲数が減少した。それに対し今年は、真夏に捕獲数が減ったが、秋深くなってから増加した。
これは、今年は干上がらなかったが、真夏の猛暑と少雨のため溜池の水質が悪化し、ザリガニの活動が鈍った、その後涼しくなってから活動が活発化したためと思われる。
いくら獲っても減らないことの一因に、仕掛けを設置できる場所の制約がある。溜池の上部から中部にかけてヨシが繁茂しており、ザリガニの絶好の繁殖場所になっているようだが、そこにアナゴ籠や人口巣穴を仕掛けることは難しい。
ヨシの中に桟橋のようなものを作れば出来るかもしれないが、景観上問題があり、せっかく来るようになったカワセミに嫌われるおそれもある。
産卵期のヒキガエルなどの混獲は、大失敗だった。アナゴ籠の入り口を、ザリガニは通れるがカエルは通れない程度に改造すればよいだろうが、籠の数が多いので現実的でない。来年は、カエルの産卵期が終わってからアナゴ籠を仕掛けることにしたい。
塩ビ管の人工巣穴は、秋になってようやく抱卵メスが入るようになった。周りの泥になじまないうちは、警戒心の強いメスは入らないのかもしれない。
溜池下流の小川で捕れるザリガニは、ごく少なかった。これは、2019年台風19号の後に、溜池の排水管を変えたためかもしれない。
台風以前は、溜池構築時のものと思われる池底部の木管によって排水していた。このため、溜池で繁殖した稚ザリは下流の小川に大量に流出し、小川にはザリガニが掘った巣穴がいたるところにあった。
台風19号で木管が流出したため、塩ビ管で池の表面水を流すように改めた。このため、溜池で繁殖した稚ザリの流出が減ったように思われる。今では、溜池下の小川でザリガニ釣りをしてもほとんど釣れない。
現在のザリガニ駆除活動では、ザリガニの減少はできていない。ただ、駆除の効果がないわけではない。溜池には、ドジョウ(多分、ホトケドジョウ)、メダカ、アブラハヤが住み着いており、ドジョウとメダカは増えているように見える。ミズカマキリなどの水生昆虫もいる。
こうしたことは、現在のザリガニ駆除によって、ザリガニ以外の生物が生きられる環境をかろうじて保っているとは言えないだろうか。
〈2022年〉
駆除の方法
・アナゴ籠の大4を溜池に、小2を溜池下の小川に設置する。前年はサキイカをエサにしたが、費用節約のためエサを徳用品の煮干しにする(同じ煮干しでも、徳用品のほうがイワシが大きく扱いやすい)。捕獲したザリガニは、大・小に区分して数を記録する。おおむね5㎝以上の赤黒くなった成体を大、それ以下のサイズで褐色の幼体を小とする(手間をかけたくないので目測)。処分方法は、溜池東岸の山中にスコップで浅い穴を掘り、そこに投下し覆土した後に踏みつぶすことにする。
4月初めから大収穫
・4月7日~大22、小2。大きな成体が多い。予想以上の収穫であり、繁殖期前に成体の数を減らすには、もっと早くから捕獲に取り掛かる方が良いようだ。また、ドジョウ(多分ホトケドジョウ)を多数混獲したので、次回から白いフラスチックトレーにアナゴ籠の中のものを移し、そこからザリガニだけをつまみ出し、他の生物は池に戻すことにする。
カエルとオタマジャクシの混獲
・4月12日からドジョウに加え、オタマジャクシ(種類不明)とニホンアカガエルの混獲が増えた。アカガエルの混獲は4月21日まで続いたが、その後は無くなった。アカガエルは林の中に棲んでいて繁殖期は早春のはずだが、なぜこの時期に集中的にかかったのか不明、繁殖期が少しずれたのか?また、すべて死亡しており、ザリガニに食い荒らされたものもあった。カエルを溺死させないためには、籠の一部を水面から出しておくとよいようだが、溜池では難しい。
稚ザリ大量捕獲
・5月2日、メス親から離れたばかりらしい稚ザリが大量に捕れた。数えるのが面倒なため、小の捕獲数には入れていない。稚ザリの大量捕獲はこの日だけ。稚ザリを腹に抱えたメスがたまたま籠に入ったため捕獲できたようだ。
・5月5日~稚ザリを食べるかもしれないアブラハヤなどを溜池に増やそうと思い、畑周辺の小川で魚捕りをして、アブラハヤの幼魚約20匹を溜池に放流した。何かの葉にかぶれたか、虫刺されのためか、腕が赤く腫れあがったためこの作業は1回で断念した。
池が干上がり大量捕獲
・7月7日~溜池の水がほとんど無くなり、水溜りに集まったザリガニをタモ網で捕獲。バケツ3分の2くらいの量になった。数を数えるのは面倒すぎる。大まかに大150匹、小50匹と見做す。大型サイズのほとんどはオスで、中くらいのにはメスが混ざる。抱卵中のメスは、水が少なくなっても巣穴の中で我慢しているのか?
・8月26日~再び溜池が干上がる。泥の上にコンパネを敷いて足場にし、村岡さん、鈴木(忠)さんと共に手づかみやタモ網で捕獲。大きなタライ半分の量になった。大400匹、小100匹と見做す。
イタチが入ってしまった
・11月24日~溜池西側の排出穴近くに仕掛けた籠がずっしり重い。中に小型犬くらいの大きさのケモノが詰まっている。手づかみでようやく引き出したのが写真の動物。一緒に、バラバラのザリガニ数匹分と元気なザリガニ5~6匹も入っていた。秋で食欲旺盛になったイタチが侵入してザリガニを食べたが、出られなくなり溺死。その後死体につられてザリガニが集まったものと思う。こうした混獲を防ぐには、アナゴ籠の入口にザリガニが通れる程度のネットを付けるとよいそうだが、かなり手間がかかる。今後も大物の混獲が続くようなら考えることにする。
人工巣穴に期待
・12月初め、Sさんが塩ビパイプの人工巣穴作り仕掛けてくれた(直径5cm・長さ40cmのものと直径4cm・長さ30cmのもの)。ただ、12月中は、これでは1匹も捕れなかった。時期が遅すぎるようだ。来年の新兵器として活用したい。
寒くても活動する個体も
・12月25日~朝には薄氷が張ったが、大5匹、小1匹を捕獲。大と言ってもやや小ぶりな若い成体で、メス3匹、オス2匹。小1匹は体長3cmくらいのメス。若い個体は寒くなっても活動するのか、巣穴にあぶれたのか?寒くなってからの活動に雌雄による差はないらしい。
2022年捕獲数累計
8月26日の大量捕獲の後、捕獲数は大きく減った
2022年月別捕獲数
捕獲総数は、大1518匹、小748匹、合計2266匹
課題と対策
①アナゴ籠では抱卵メスや稚ザリが捕れない
抱卵メス捕獲には人工巣穴、稚ザリ捕獲にはしば漬けが効果的らしい。来春から試してみたい。
②溜池下流の小川と湿地での駆除方法
22年は、小川に仕掛けた小型アナゴ籠が盗まれこと、水深が浅いところで効果的な捕獲方法が分からなかったことなどのため、ため池下流の小川と湿地では、ほとんど捕獲作業ができなかった。23年には、小川と湿地の一部にアナゴ籠と人工巣穴を設置したい。ただし、混獲する生物に注意して行いたい。
③混獲の問題
イタチなどの大型動物がアナゴ籠に入らないようにするためには、籠の入口に適当な大きさのネットを張る必要がある。また、カエルの混獲・溺死は仕方がないのか?(ちなみに、捕れたのはニホンアカガエルだけ。池に棲んでいるトウキョウダルマガエルはなぜか入らなかった。)オタマジャクシと魚については、一部はザリガニに食べられるものの、アナゴ籠の内容物をトレーに移し、それらをすぐ放流することによって、かなり救えている。
④捕獲個体の処理方法
捕獲したザリガニの処理方法として、山中に浅い穴を掘って埋め、土をかけてから踏みつぶす方法としたが、埋めたザリガニの一部は1週間後にも生きていた。それらが歩いて溜池に戻ることはなかったと思うが、確かめたわけではない。また、埋めたザリガニを掘り返して食べ散らす動物(多分タヌキ)がいる。埋める場所は希少植物のないところにしたが、動植物にどのような影響があるかよく分からない。食用にしたり、堆肥にしたりする処理方法もあるが、手間と処理するときの気分を考えると難しい。
【参考資料】
今のところ、最も詳しく充実した資料は、2022年環境省作成「アメリカザリガニ対策の手引き」、URLは次のとおりです。